ワインの銘醸造地、ボルドーとブルゴーニュをソムリエ・エクセレンスが解説します。
ボルドーとブルゴーニュを解説
ワインに興味を持ち飲み始めると、フランスワイン、とりわけボルドーとブルゴーニュの名前を目にして耳にするようになります。
今回はボルドーとブルゴーニュの基本的な情報を整理して解説します。
ボルドーワインとは
位置と歴史的背景
ボルドーはフランスの南西部に位置し、ジロンド県に属しています。ガロンヌ川とドルドーニュ川、そして海へと注ぐジロンド川のおかげで港町として貿易の重要な拠点となっていきました。ワインの大消費国イギリスに世界中のワインが運ばれた時代、英国領になることにより、イギリスとの交易 でボルドーワインが発展していきました。そしてフランスを代表する銘醸造地となります。
気候
ボルドー市の緯度は北緯45度(北海道あたり)にありますが、海からの影響 で温暖な海洋性気候に恵まれたブドウ栽培がおこなわれています。また比較的 降水量が多く、しばしば病害があり、それはソーテルヌ地区などではブドウの貴腐化を促しています。
A.O.C(原産地統制呼称)
ボルドーでは 60のA.O.C(原産地統制呼称)があります。赤ワインが有名ですが、世界基準の白(辛口ワイン・貴腐ワイン)・ロゼ・スパークリングなど、辛口から甘口まで様々なタイプのワインを産出しています。
格付け
現在ボルドーでは公式に行った格付け(ランク)があります。それぞれに独自の格付け行い、シャトー(生産者)を格付けしています。現在、総生産量の 5% を占めるボルドーワインが選ばれています。
・メドックの格付け(1855年)
・ソーテルヌの格付け(1855年)
・グラーヴの格付け(1953年)
・サン・テミリオンの格付け(1954年)
・メドックのクリュ・ブルジョワの格付け(1934年)
・メドックのクリュ・アルティザンの格付け(2006年)
ブドウ品種
ボルドーではごく一部のワインを除いて アッサンブラージュ(複数のブドウのブレンド)でワイン造りを行っています。異なるブドウ品種のワインを独自の割合で混ぜ合わせることによって、それぞれのテロワール特有の個性が活きた、バランスの良いワインに仕上げています。
赤ワイン用のブドウの品種
・メルロ(MERLOT)
ボルドーで栽培面積が最も多い品種で、早く収穫期を迎えます。冷たく保水力のある 粘土質土壌 で潜在能力を発揮します。そのため 右岸(サンテミリオン、ポムロール)で多く栽培されています。赤い果実のジューシーな果実味、ワインに滑らかさを与えます。(メルロのページへ)
・カベルネ・ソーヴィニヨン(CABERNET SAUVIGNON)
ボルドー地方の伝統的な品種で晩熟型のブドウです。理想的な成熟のために必要となる、左岸 の 砂利質 の温かい土壌に適しています。黒い果実の風味をもたらし、ワインに骨格や豊富な渋みを与えます。(カベルネソーヴィニヨンのページへ)
・カベルネ・フラン(CABERNET FRANC)
カベルネ・ソーヴィニヨンの親。カベルネ・ソーヴィニヨンより早く熟します。温暖化する中、注目されている品種で酸味に特徴があり、ワインに爽やかさや繊細さ与えます。非常に優れた補助品種であり、わずかな例外を除き主要品種として使われることはありません。(カベルネ・フランのページへ)
白ワイン用のブドウの品種
・ソーヴィニヨン・ブラン(SAUVIGNON BLANC)
以前はセミヨンが白ワインの主体となっていましたが、近年ではソーヴィニヨン・ブランがわずかな例外を除き、辛口白ワインで中心となる品種となっています。生き生きとした酸、ミネラル感と爽やかな香りをもたらします。ライムやレモン、グレープフルーツなどの柑橘フルーツアロマを備えています(ソーヴィニヨン・ブランのページへ)
・セミヨン(SEMILLON)
貴腐ワインの主要品種で中甘口から甘口ワインでは不可欠な存在です。そして辛口白ワインにおいても必ずと言ってよいほどブレンドされています。ワインにまろやかさや豊潤さを与え、蜂蜜の香りをもたらします。貴腐ワインになるとその真価を最大限に発揮します。(セミヨンのページへ)
Mis en Bouteille au Chateau の品質保証
シャトー所有のブドウ畑で収穫されたブドウを用いて、そのシャトーの敷地内にある醸造設備で醸造を行い、そのシャトーの敷地内で瓶詰めを行った。ブドウ栽培から醸造・瓶詰めまで一貫生産されたワイン。
1900年代初頭までメドック第1級シャトーといえど樽詰めした後、ネゴシアンの元で樽熟成と瓶詰めが行われていました。しかし、瓶詰め作業がネゴシアン任せになりますから品質のバラつきや不正(他のワインを混ぜて水増ししたり、アペラシオンを無視してブレンドする手法が横行していた)が行われ、品質に対する評判の失墜していた。ボルドーでは、シャトー元詰が当たり前のように思っていますが、ボルドー全体がこのようになってきたの1970年代頃からです。
Mis en Bouteille au Chateau(シャトー元詰)
Mis en Bouteille au Domaine(ドメーヌ元詰)
Mis en Bouteille a la Propriete(所有者元詰/生産者元詰/協同組合元詰)
ブルゴーニュワインとは
位置と歴史的背景
フランスの北東部、北緯46度(ボージョレ)から48度(シャブリ)に位置しています。夏は暑く、冬が寒い 半大陸性気候のもとワイン造りを行っています。ヨーロッパ北部と地中海沿岸を繋ぐ最も重要な交易路上に位置し、ローヌ河流域とパリを繋ぐブルゴーニュは歴史的な交易の要衝としてワイン文化も発展しました。
A.O.C(原産地統制呼称)
ブルゴーニュでは84のA.O.C(原産地統制呼称)があります。赤ワインが有名ではありますが、白ワインの生産量が多く全体の62%、赤ワインは僅かに29%、スパークリングのクレマン・ド・ブルゴーニュ8%、ロゼワインは1%となっています。
格付け
現在ブルゴーニュでも公式に行った格付け(ランク)があります。ブドウ畑の区画(クリマ)を格付けしています。
クリマ(Climats)とリュー・ディ(lieux-dits)の存在
クリマという言葉はブルゴーニュ特有のもので、ブルゴーニュにおけるテワールの定義を構成します。クリマは明確に限定された土地の区画であり、特定の地質および気候条件の恩恵を受けています。区画による品質格付けといえます。
リュー・ディは土地台帳が導入されて以来、その名を地形学あるいは歴史的に由来する土地の小さな区画を指しています。ブルゴーニュでは永い間、クリマとリュー・ディが混同されて使われてきましたが、実際には異なるものです。例えばひとつのクリマのなかにいくつものリュー・ディがあることもあれば、リュー・ディがクリマになっていることもあります。
グラン・クリュ(特級)を頂点とし、その下にプルミエ・クリュ(1級)、村名(ヴィラージュ)、地域名(レジオナル)と続く、ピラミッド型になっています。
・グラン・クリュ(Grands Crus) 33の畑(クリマ)を格付け
・プルミエ・クリュ(Premiers Crus)
・村名アペラシオン(Appellations Villages)
・地域名アペラシオン(Appellations Régionales)
ブドウ品種
ブルゴーニュではごく一部のA.O.Cを除いて1品種だけのブドウでワイン造りを行っています。単一品種によるテロワール特有の個性が活きたワインに仕上げています。
赤ワイン用のブドウの品種
・ピノ・ノワール(PINOT NOIR)
日当たりの良い 粘土石灰質 の土壌で上質な赤ワインが生まれる。ピノ・ノワールは世界各国で栽培されるが、ブルゴーニュらしさはこの地区のワインだけでしか表現できず、ピノ・ノワール=ブルゴーニュのイマージができている。熱狂的なブルゴーニュワインラヴァ―が多いのはこのためです。(ピノ・ノワールのページへ)
・ガメイ(GAMAY)
日本では新酒のボージョレ・ヌーヴォーのブドウとして有名。花崗岩質の土壌 に向き、果実味豊かで渋みが少ない飲み口が良いワインが生まれる。(ガメイのページへ)
白ワイン用のブドウの品種
・シャルドネ(CHARDONNAY)
世界的に栽培されている白ブドウの代表格、辛口の高級白ワインはこのブドウから造られています。木樽との相性が良く、樽発酵や樽熟成 を行い、香り高く複雑なワインが生まれる。(シャルドネのページへ)
・アリゴテ(ALIGOTE)
シャルドネとピノ・ノワールの栽培に適さない土地で栽培されている。村名アペラシオンでは唯一 ブーズロン だけで認められている。逞しく太い酸味が特徴的です。
Mis en Bouteille au Domaine の品質保証
ドメーヌ所有のブドウ畑で収穫されたブドウを用いて、そのドメーヌの敷地内にある醸造設備で醸造を行い、そのドメーヌの敷地内で瓶詰めを行った。ブドウ栽培から醸造・瓶詰めまで一貫生産されたワイン。
ブルゴーニュでは1930年代に一部のドメーヌで元詰が始まったとされています。ブドウ栽培を中心とした零細農家が多く、資金力がなくワインへと醸造する設備を持たず、ブドウ売りに出さざるを得ず、ネゴシアンに安く買い叩かれてしまったりとネゴシアンが支配する時代が長く続いた、そこから独立しようとする動きが見られ始め、またワインも生産者元詰めの品質重視へ時代が訪れ、1970年代で元詰を行うドメーヌは1割にも満たなかったが、現在で多くの生産者で元詰めが行われるようになった。
Mis en Bouteille au Domaine(ドメーヌ元詰)
Mis en Bouteille au Chateau(シャトー元詰)
Mis en Bouteille a la Propriete(所有者元詰/生産者元詰/協同組合元詰)
参考サイトと文献
ボルドーワイン委員会 / ブルゴーニュワイン委員会 / 日本ソムリエ協会 教本